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その店員に、踏み壊された照明の詳細を話すと、彼は分厚いカタログからいくつか商品を見せてくれた。
「これは」と思うものがあって思わず「あっ!」と声を上げた。彼はポケットから取り出したスマホを親指だけで操作した。
程なくして、小さな落胆のため息。
「こちらの型番は生産完了品です。他の店舗にも在庫がなさそうですね」
「......そうですか」
「他のを探してみましょう」
「いえ」
少し、語調が強くなってしまった。気持ちをすぐに落ち着けて「大丈夫です」と笑って見せた。
「一本なくても使えてるんで」
ちょっと貧乏くさいことを言ってしまった。私は「どうもありがとうございました」と頭を下げて、そそくさと売り場を後にした。
清潔な店内でキラキラ輝くカトラリーの前を通り過ぎ、自動ドアへ。ガラスの扉が真ん中から開くと、一瞬、躊躇った。自分から出て行ったのに、追い出されるような気持ち。
私は重い足取りで店を後にした。
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