カモメの翼

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 家に帰ると、早速椅子に登って天井から元の照明を外した。こんなに重いと思わなかった。  踏まれた照明は取り敢えず引っ越し屋に付けてもらったし、購入時の取り付けは彼がやってくれたから。 「バカみたい」  大きいサイズの燃えないゴミ袋に入れて、部屋の隅に置いた。新しい照明を取り付けようとすると、器具(引っ掛けシーリング)に亀裂が入っていた。  このアパートは古いし、引っ越し屋が、取り付ける時に器具が古いから大きいのは負担になるかも、とも言っていたのに、無理を言ったんだ。 「……はあ」  椅子から降りて、ポケットの中に入れていた幸田さんの名刺を取り出す。いや、こういう場合は管理会社に連絡する方がいいのか。 「めんどくさ」  照明(カモメの翼)を机に置き、ベッドに仰向けに寝転んだ。  こんな時はいつも湊人(みなと)に連絡すれば何とかしてくれたのに。 「違う」  自分の考えを即座に否定した。全部あいつのせいだ。引越したり、職場を変えなければならなかったのも、それでお金がかかったのも。 「全部全部全部ッ......!」  ここ数週間、ずっと奥底の自分と戦っている。頭では分かっているのに、まだ心が現実に追いつかない。  
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