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父さんは子供の俺から見ても、頭は悪くないし、それどころか優秀な人だと感じる。いわれた仕事はキッチリこなす(らしい)。上司のウケもいい(ようだ)。ただそのためか、同僚に好かれなかった(らしい)。大体、同僚に目をつけられ、仕事場にいられなくなるのだ。
近所に住む祖父母を呼んで家族会議を開くこともしばしばあった。俺は同席しないし、詳しく説明されることもないが、家族たちのぼやきを総括すると、何となく実態がつかめた。父さんは度々仕事を辞めると云い出し、家族がなだめて続けさせる。しかし、五年が限度で辞めて帰ってきてしまうのだ。
(父さんには、もっと幸せになって欲しい)
何だかんだ世間が云っても男はやっぱり仕事が生きがいであれば幸せだ。俺は古風なんだ(じいちゃん子だから)。でも、俺にはどうしようもない。
玄関をそっと閉めた。ベッドにはクッションを積み上げて布団をかけ、あたかも俺が眠っている体を装ってきてある。
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