笑顔を見せるその時に

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実際佐山との体格差は中々のものだった。 俺はαだし体格には恵まれ、身長も180センチは超えていた。 おそらく20センチくらいは差がありそうだ。 「……保健センターは、好きじゃない。 人がいないところで放置してほしい」 抱き抱えられたら抵抗はできないと悟ったのだろう。 佐山は目をそらして観念したように呟いた。 「んー」 触れた佐山の体から、体温が高いことが分かる。 これは熱がありそうだ。 人がいなくて休めるところ、か……。 「俺の車で病院連れて行こうか」 瞬間、佐山が明らかにびくんと肩を震わせた。目を見開き、ぶんぶんと首を振る。 首を振ることで頭痛がしたのか少しだけ顔を顰めた。 その姿が何かに酷く怯えているように見えて、いたたまれなくなる。 「……とりあえず、車に連れていくわ」 佐山の体を支えながら何とか歩く。 駐車場は先ほどまで講義を受けていた教室から割と近いところにあった。 隅の方に停めていたので、さほど目立つことはないだろう。 助手席をリクライニングにしてやると、 呼吸することさえ苦しそうな佐山をそこに横にした。 「一応ビニール袋置いとくからな。 吐いても良いから」 答える気力さえないのか佐山がすうっと目を閉じる。 「本当に病院行かなくて大丈夫か」 「いつものこと、だから」 確かに見かけるたびに体調悪そうにしているなと思ったものだが、 これが日常的なものだとしたらそれはなおのことまずいのではないだろうか。 改めて見ると、佐山は心配になるほど華奢だった。 大きめのパーカーを着ているからかそこまで気にはならなかったが、 手首や指、首筋など見えている場所だけでもその細さがよく分かる。 「……連絡、しないと」 「え?」 呟いた佐山の意識が遠のいていくのが分かる。 透き通った白すぎる肌に目の下の隈。 細い体、じんわりと滲んだ汗。 「……おまえ、本当に大丈夫なのかよ……」 佐山奏は、今にも消えてしまいそうなくらい危うい存在に見えた。
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