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夜を迎え雪が止む。
思った以上に早く雪はどうにかなった。
"もしかして天が味方しているのか?"
ネズミは妙な錯覚を覚える。
ビル街の明かりが次々と消えていく。
時間にしたら日が変わるか、それくらいだろう。
動き出すにはちょうどいい頃合いだ。
高架下をくぐり、西側のビル街に向かう。
真っ白な地面が踏み荒らされたであろう無数の足跡。
天気関係なく、今日も沢山の人が行き交っていたのがわかるが、それでもいつもより人気も少なく静かな夜に感じる。
路上生活者たちの寝床が並ぶ通りが見えてきた。
ここも同様にいつもより人も少なく静かである。
まずネズミは張り紙だらけの寝床に狙いを定める。
今回は見張ってる人間もいないようだ。
今が絶好のチャンスだと確信し募金箱に手を入れる。
カランカラン・・・
よし、今回は成功だ。
握りしめた小銭の感覚を忘れぬうち、道路を挟んだ寝床の並ぶ通りに狙いを定める。
カタン!
"あっ。"
ここの主が乾かしている靴を倒したようだ。
ネズミは直す事なく次の場所に向かう。
信号待ちの間に悠々と報酬を数え出すと、声をかけられる。
「おい、アンタ何してんだ?」
一人の男が汚いものを見るような目でこちらを見つめている。
寝床の主だろうか。
もしやバレたのか?
ネズミは困惑し、青信号になっても横断歩道のまえに立ち尽くした。
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