4人が本棚に入れています
本棚に追加
「アンタここの金盗んだの?どうなの?」
「・・・・」
ニット帽の目を合わしたまま、ネズミは無言を貫く。
「お前がやったのか?どうなんだ?」
"どうやら返した方が良さそうだな。"
ネズミは手にした小銭を見せながら差し出す。
掌の上には数えれば200円ほどのなるだろう1円、5円、10円の山。
だが、受け取るどころか目の前の男はため息をつく。
返そうというのに、この人は何が不満なんだろう。
ネズミは疑問に思った。
そして男はネズミに言い放つ。
「あのさ、もうそれやるよ。だからもうここ来ないでくれないか?」
「・・・」
「約束しろ。な?」
ネズミは無言で頷くしかなかった。
とりあえず、今回は見逃してもらったという事でいいのだろう。
得た小銭を手に信号を渡り、ネズミは向かいの通りへと向かう。
あの別世界だけで200円ほどの収支を得たが、やはりもの足りないと感じたからだ。
"誰も彼も、ここの通りの人間はチョロいな。"
改めて、天が味方していると強く錯覚したネズミだった。
最初のコメントを投稿しよう!