雪花の捕物帳〜前編〜

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「アンタここの金盗んだの?どうなの?」 「・・・・」 ニット帽の目を合わしたまま、ネズミは無言を貫く。 「お前がやったのか?どうなんだ?」 "どうやら返した方が良さそうだな。" ネズミは手にした小銭を見せながら差し出す。 掌の上には数えれば200円ほどのなるだろう1円、5円、10円の山。 だが、受け取るどころか目の前の男はため息をつく。 返そうというのに、この人は何が不満なんだろう。 ネズミは疑問に思った。 そして男はネズミに言い放つ。 「あのさ、もうそれやるよ。だからもうここ来ないでくれないか?」 「・・・」 「約束しろ。な?」 ネズミは無言で頷くしかなかった。 とりあえず、今回は見逃してもらったという事でいいのだろう。 得た小銭を手に信号を渡り、ネズミは向かいの通りへと向かう。 あの別世界だけで200円ほどの収支を得たが、やはりもの足りないと感じたからだ。 "誰も彼も、ここの通りの人間はチョロいな。" 改めて、天が味方していると強く錯覚したネズミだった。
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