雪花の捕物帳〜後編〜

3/7

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「シモザワさんコイツ見といて。あの人起こしてくるわ。」 「あいよ。」 "シモザワ"という白髪混じりの老人が睨みを利かせこちらを見張る。 その横でメガネの男は寝床の主を呼ぶ。 「お兄さん起きてる?会わせたい人いるんだけど。」 「あーい・・・今出ますね。」 張り紙だらけの箱状の別世界の中から寝起きの男性の声がする。 ガバッと扉が開くと主が中から出てきた。 昨日のニット帽の男だ。 「どうしました?あれ?なんだ、また懲りずに今日も来たのか。お前来るなって言ったろ?」 この一言を聞き、メガネの男がもう片方の手で顔を張る。 パチーン!! 「テメェ嘘つきやがったな!昨日も来たのか?いい加減にしろ!」 「いや、その・・・」 「お兄さん、コイツ何回もやってるよ。おい、ここからいくら盗った?2000円くらい盗ったろ!」 「・・・」 「先輩、落ち着いて。殴るにしてもここじゃ人目が多い。場所を変えて話聞こうよ。」 またしてもこのニット帽の男は、ゴミを見る目ような冷たい目でこちらを見てくるのだった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加