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決心
ターミナル駅周辺、線路を挟んだ東側の繁華街は今日も変わらず人で溢れかえる。
ネズミも変わらずじっと道の片隅に座っている。
違うといえば、昨晩殴られて身体中痛いくらいか。
にしても、昨日の出来事はまさに悪夢だった。
セムラに言われた時にやめておけばよかったと後悔したが、もう立ち寄らなければいいだけのこと。
とにかく忘れよう。
そう考える中、遠くからジロジロ見られているような気配が。
一体誰だろう。
視線の主が近づいてくる事で、輪郭がはっきりしてくる。
細い目にメガネの一見どこにでもいそうな男。
あの忘れたくても忘れられない風貌の男。
昨日自分を痛めつけたあの男。
「よぉ、昨日ぶりだな。お前ここにいたのか。」
西側にいる路上者フルカワが視線の正体だった。
それがわかると、ネズミは条件反射で人が多い街中を走りだす。
街行く人の視線が集まろうとも足を止めなかった。
「おい逃げんな!待て!」
フルカワの声が遠くなるまで走り続ける。
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