5人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
深夜二時ごろを回り繁華街に人がひしめき始める中、男は動き出す。
厚がけのシーツと紙箱を抱えたまま。
この周辺で盗むのはもう限界かもしれない。
繁華街周辺、ましてや隣町ではおそらく顔は割れている。
背中辺りまで伸びた長髪に何ヶ月も整うことなく生やしっぱなしの無精ヒゲと言う見た目。
道行く人皆思わず目線を逸らしたくなる見た目はまさしく典型的な浮浪者のそれだ。
そんな事は自分一番よく知っている。
だからこそ、同じ場所で盗みなんてやれないのだ。
高架下をくぐり西側に出ると、自分の普段いる東側とは打って変わって静かに思える。
ビル入口のシャッター前で横たわるように寝る人を見て男は思う。
こんな人間が金なんてまともに持ってるはずはない。
狙うなら同じ路上者でも、決まった寝床を確保している人間だ。
ダンボールやブルーシートで区切られた寝床が並ぶ場所についた。
各々の寝床の脇に空き缶など募金箱が置いてあるのは調べがついている。
夜中でも特に人通りの少なく、タクシーが並んでいないこの時間がチャンスなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!