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寝床に主がいないのを確認して手を入れようとする。
「おい!お前何やってんだ!」
怒声に合わせてネズミは手を引っ込める。
近くの人間に見張られていたようだ。
「お前まさか、ここの人の盗んだのか?」
細い目のメガネの男に詰め寄られる。
一見普通に見えるが、こんな事を言ってくる事から恐らく路上者だろう。
脇にはまた別の二人組が立っている。
肩に掛けた大きな黒いカバン、二人とも旅行者だろう。
路上者相手に随分と親切な連中だ。
ネズミは妙な組合せの三人を見つめる。
しかし自分は『まだ』盗んでない。
盗ろうとした事実を隠し、ネズミは答える。
「盗ってないです・・・」
「テメェ、ジロジロ人の寝床見るもんじゃねぇからな。分かったか?」
「はい、すいません・・・」
「分かったらとっとと行け!クソが!」
「・・・・」
ネズミは恐怖心からか、言葉を失った。
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