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ネズミはメガネの男に促される様に小走りで逃げた。
肩に厚掛けのシーツを抱えながら。
走るたびにずれ落ちるズボンを気にかける余裕もなかった。
"クソっ、失敗した・・・"
やはり衝動的に動くものではない。
日中の昼過ぎの時間に足を運んで成功する確率はあまりに低すぎる。
しかしネズミは諦めていない。
あの張り紙だらけの寝床だけ、同じ路上者の寝床と違う『別世界』の様に感じたからだ。
あそこに行けば、少しは足しになるのは間違いないのだ。
またの機会が訪れるまで、繁華街の隅っこで待つしかなかった。
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