5人が本棚に入れています
本棚に追加
雪花の捕物帳〜前編〜
"寒すぎる・・・ホットのコーヒーを何杯も飲んだら破産してしまう。"
朝から全国的な大雪となったこの日、ネズミは凍え死なないよう必死だった。
"手持ちをとにかく増やそう、そうすればこの寒さはなんとか凌げるはずだ。"
と。
そして思い立つ。
"雪が落ち着いたとき、あの場所に行こう。"
そう、先日盗みを失敗した西側のあの場所に。
テレビもスマホも何もないこの男は、この大雪がいつ止むかも予想が立てられない。
夜になるのか、
翌日になるのか、
とにかくじっと待つしかなかった。
雪に覆われた真っ白な道の片隅に座り込む異様な姿を、誰も気にする事なく歩いていく。
それでも男はビル街へと視線を向け続けた。
褪せた灰色のビル街が白い空に同化し、より色褪せていく景色はとても美しいものに見えた。
自分とは正反対のもののように。
最初のコメントを投稿しよう!