そうじゃなかった筈の二人の話2

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そうじゃなかった筈の二人の話2

「こいつ、全然連絡とかしてこないでしょ」 「え?」  友人の言葉に彼女は不思議そうに聞き返した。うん。確かにクリスマス前は全然しなかった…気がする。覚えてないや。後で昔のやり取りを見てみよう。でも今は毎日のように連絡をしあっているから、そう言われた彼女は驚いた様に目を丸くした。 「じゃあ出不精じゃない?」 「…え?」  そうですね。クリスマス前まではね。本当に碌に会わなかったし、休日はずっと部屋にいたなー。その後からはお互いの予定が合えば毎週会っているんだよね。ここ最近の事を思い出したらしい彼女はまた怪訝そうに聞き返した。 「えー? そうでもない? じゃあ、会ってもすぐ帰りたがらない? することないなら帰るみたいな態度するだろ」 「…いえ」  うん。お前にはそういう態度を取った事もあって本当に申し訳ないとは思う。でもさ。何をするでもなくお前の愚痴を延々聞かされるなら帰りたいと思っちゃうのは普通じゃない? それに比べて彼女とはコーヒー一杯で数時間、ずっと話をしていて終電間近になってしまったこともあるから、それを思い出したのかもしれない彼女はやっぱり困った様に否定をした。その、全く噛み合わない会話にイライラしたらしい。 「だったらクリスマス、こいつ何もしなかったでしょ!? 知ってるんだからね!!」  もうねちねちと、何とか俺の駄目な事を肯定して欲しいらしい同級生は叫んだ。あー。そう言えばその後の事、何も話してないや。っていうかお前何でここにいるの? 「…いえ…あの」  もじもじ。と、彼女はちょっと頬を染めた。そういう彼女を見慣れない友人は、一瞬で怒りを引っ込めて目を丸くする。その彼女が、やっぱりらしくない小さな声で呟いた。 「私の行きたい場所に連れて行ってくれましたし…プレゼントも…」 「はぁー!?」  きっ! と、こっちを睨む。あれー? おかしいな。俺の事を心配してくれていたよね。色々アドバイスもしてくれていなかったっけ? ちゃんとやった感じなのに何でそんな顔する訳? あと、だから何でお前ここにいるんだよ。 「ふざけんなよお前。絶対庇って貰ってるだろ」 「本当に三咲の行きたいところ行ってプレゼントも渡したけど。…一応」  そうとしか言いようがない。そうしたら何故かべーん! と、おしぼりを机に叩きつけて友人は激昂した。 「嘘つけー!! お前誰だよ! そういう事絶対しない奴だったのにー!!」 「…」 「…」  唖然としている彼女に小声で言った。こいつ、酔ってるだけだから気にしなくていい。と。それにしても酒の席で失敗したことがあると言っていた癖に全然直る気配がないなこいつ。と、色々と上手くいっている自分に嫉妬してやけ酒している事など気付かずに思う。 「…あ。じゃあさ」  ふと、何かを思い出したように友人は急に静かになって彼女の顔を覗き込んだ。止めろ。この酔っ払い。あと一ミリ近付いたら顔面引っ叩いてやると思っていたら、その一ミリをキープしたまま友人はこんな事を言う。 「こいつの部屋に行ったことある?」 「え? …い、いえ」 「そうでしょー? こいつ、部屋に人入れるの好きじゃないもんねー。俺は入ったことあるけどぉー」  何の自慢だよ。と思いながら聞いていた。酔っぱらって帰れなくなって突撃してきた挙げ句、玄関で寝落ちしたから入れてやっただけだぞ。お前を招いた覚えはないし、翌朝叩き出されたのは忘却の彼方か?  この野郎。いい加減ムカついてきた。今日は金曜日。仕事の後に二人で食事をしていたら部の新年会の後ふらついていたこいつに見付かってしまった。呼んでも許してもいないのに勝手に席に座ってきて余計な事をぺらぺらと。 「じゃあ、三咲。明日うちに来る?」 「はえ?」  明日はどこに行こうか。なんて話の途中でこいつに邪魔されたから、三咲が空いているのは知っているし断らせない。こいつを黙らせてやる。 「あの、え? でも」  本当にプライベートな空間に人を招くの好きじゃないんだろうな。と、ちゃんと察したらしい彼女は困った顔をした。できる子。そういう所も良い。でも駄目。来るの。 「俺も行くー」 「お前は来なくていい。っていうか来るな。邪魔」 「邪魔って何だよ。俺がいたって困らないだろ?」 「困るに決まってんだろ。来るな」 「別にいちゃいちゃする訳でもないし」 「する」 「え?」  と、二人の声が重なった。え? じゃねえよ。するに決まってんだろ。そして目を真ん丸にして酔いがぶっ飛んだらしい友人にはっきり言う。 「だから絶対来るな。来たらお前と友達やめる」  ぽかーーん。と、口を半開きにした友人は動かない。魂抜けたかな。煩いから暫くそのままでいろと思っていたら、不安げに自分達を見ている三咲と目が合った。あー。余計な気を使わせた。でもいい機会だ。 「三咲」  こそこそ。と、彼女の耳元で呟く。 「冗談じゃないから。明日おいで」  そう言ったら三咲は真っ赤になった。
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