そうじゃなかった筈の彼女の話2

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そうじゃなかった筈の彼女の話2

 本当に、こんな事をするなんて自分が信じられない。お互いにそう思いながらも見ないふりをした。  相手に対する感情の大きさも、そういう事に対する興味も、きっと人並みにすら無かった筈の二人が今ではこんなに夢中になっている。それを受け止めてくれる相手がいてくれて幸せだと思う。沢山気持ち良くなりたいし、沢山気持ち良くなって欲しい。理由なんてそれだけで十分。 「ここ好き?」  触れながら耳元で囁いた。表情は見えないけれど感じてるのは震えや呼吸から伝わってくる。 「あ…は…はい…」 「もっとして欲しい?」 「……う……あ…あの…」  恥ずかしそう。そりゃそうだ。じゃあ。 「やめとく?」 「あ……や…やだ…高埜さん…」 「何?」 「ん…っ」  擽るように舌先で首を舐めたら怯えるように震えた彼女に言った。指も同じ様にほんの少ししか触れずに。俺、本当に意地が悪いな。どうして彼女にはこういうことをしてしまうんだろう。 「も……もっと…」  自分の肩で言葉を隠すように顔を伏せて彼女が必死に声を絞り出す。あー。そうですよ。こういう彼女が見たいからです。 「もっと? 何?」 「…もっと…し…して下さい…」  よく言えました。  お望み通りそのまま彼女をいじめると、観念したのか良かったのか、拒否もせずに全部受け入れた。やがて求めるような仕草までしてくれて、さっき言った通り凄いいやらしい。このまま抱いてしまおうか少し迷ったけど、さすがに窮屈なので止めた。ベッドに行こうと離れて彼女を立たせると、ガウンで体を隠しながらよろよろと立ち上がる。そういえば立ったまま抱き締めたことないなと思ってしてみたら、細くて柔らかい体が自分に抵抗もなく凭れかかってきた。自分が好きにできる頼りない体に、またあんまり自分が好きではなかった筈の感情がわき上がってくる。 「ん…あ…あん…」  キスをしてガウンの中に手を入れたらそれを拒むことなくしがみ付いて彼女が声を漏らした。うーん。何か狡い。反則だろ。誰がこんな彼女を想像した? こんなの夢中になるに決まってるじゃん。 「…高埜さん…」  なんて、こっちがギャップを楽しんでいる余裕の一欠片も彼女には無かったようだ。唇が触れるような至近距離で震える声が言う。 「ベッドでして下さい…」  一生の内で聞けるかどうか分からないその言葉に少し欲情した。  それからベッドで愛し合って、彼女の中に入ると敏感に感じているのにほっとしたような表情をする。嬉しそう。 「ん…ん、ん、ん……」  キスをして動いたら甘い声が漏れた。クリスマスの時とは少し違う気がする。経験や時間がそうさせてくれたなら嬉しい。 「ん…んー…」  それにしても今日の彼女は何か変。やたらしがみ付いてくるし撫でろと言わんばかりに手にもすり寄ってくる。いつもの少し怖がるような初心な感じ方も、今日は力が抜けていてただひたすら気持ち良さそう。どうしたんだろう。気のせいか?  止まって、ふー…ふー…と熱い息を漏らす彼女の頬を撫でた。すりすり。やっぱりすり寄ってくる。いつもはこっちが撫でるのを受け入れる感じだったのに。そう思っていたら指が唇に触れた。ちゅ、とキスするように唇が動く。え? と思いながら指を少し動かしたら抵抗もせずにぺろ、と舐めた。何これ。らしくない。  いじめ過ぎたかな。と、思いながら反省はしない。そうならもっといじめたくなる。どんなに近付いても無くなりはしない彼女の真面目な印象とのギャップがたまらなく良い。  軽くキスをしたら首に腕が回った。 「も…っと…キスして下さい…」  …あれ? そういうの、いつもはこっちが煽るまで言わないじゃん。 「…キスだけで良いの?」 「や…だ…ぎゅってして…」  キスはお預けにして聞いたらこんな言葉があっさり返ってくる。あれぇ? 本当にどうした? でも嫌な筈がない。自分もそうしたかったからお望み通りに抱き締めてキスをしたら、その後に抱き着いてきた彼女がこんな事を呟く。 「…あ…気持ち…い…」  ええ? そんな言葉を自分から言うなんて信じられない。それが演技じゃない事は体から伝わってくるけど、本当に何で?  …あ。もしかして。 「三咲」  耳を噛んで呼ぶと、貪欲に感じているのを隠す素振りもない。あー。そうなんだ。今日はこんなに晒すんだ。首にキスをすると中まで伝わってくる。ここも好きだよね。知ってる。 「ここにキスマーク付けて良い?」 「え? あ…あの…」  ううん。と、彼女は小さく首を振る。もう理性とかじゃなくて彼女の中で駄目って決まっている模様。そりゃそうだよね。でも、もう一押し。 「何で?」  ゆっくり動いて、閉じかけた力の無い目に問い掛けた。今までもそうだったけど、それよりももっと優勢な今、彼女を攻める言葉が止まらない。 「俺のこと好きでしょ?」  我ながら卑怯だ。と思うけど確認の為には仕方ない。普段ならこう言ったって折れる筈がないんだから。  いや、それよりももっと、こういうやり取りに揺れている彼女が良いんだよな。 「…んん…」  こく、と彼女は頷く。 「じゃあ良い?」  え…ええと…。と、彼女は迷っている様子。 「ねえ」  優しく愛撫して囁いた。あんなにいじめたのに今更甘えて都合の良いことだ。それでも今の彼女なら崩れるかもしれない。 「良いじゃん。俺も三咲の事が好きだから付けたい」  ちょっと攻め過ぎたかな。と思ったけれど良いや。どうせ結果は変わらない。 「ね」  動きながらキスをしたら両方もっとと主張してくる。どっちもして上げるから。 「良いよね?」 「あ…は…はい…」  あーあ。そうなんだ。許すんだ。これは後で審議が必要だけど、一旦忘れていつもと少し違う彼女と楽しもう。
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