そんな事想像もしてなかった人の話2

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そんな事想像もしてなかった人の話2

 ちーたんたら。もう、いけずなんだから。と、自分のところに戻ってきて貰って何とか治まった恋人であり妹であり親友である彼女を見ていた三人は、気を取り直して改めてご挨拶をした。 「何かすいません。いきなり騒がしくして」 「いえ。こちらこそ。お休みの日にすいません」  そうは言ってもね。この人のせいじゃないし。と、三人はまた子どもに夢中になっている彼女を見る。こいつのせいでこうなっているのにこの子何やってんの? まぁ、良いけど。 「…本当に姪っ子ちゃんが大好きなんですね」  知ってた。けれど目の当たりにしてその感想しか出てこない。嬉しそうな顔しちゃって。 「あの、何かその件に関しても色々とご迷惑をおかけしているみたいで」  へこへこ。と両親は彼氏に頭を下げた。クリスマスとか本当にごめんなさい。 「とんでもないです。そのおかげで楽しい事も沢山あったので感謝してます」  にこにこ。と笑顔でそう言ってくれて安心した。良い人ー。その隣でちーたんちーたんは治まらない。煩い。 「…で、あれ? えっと…それで今日はどうされました?」  と、何一つ気付いていないおにいは呟いた。こいつ正気か? と隣で妻が目を剥く。 「…ええとー」  と呟いて彼氏は困った様に隣を見た。そして、どうしようかな。自分から言っても良いのかな。という視線と全然気付かない親友に妻は切れた。この兄妹は!! 本当にもおーーーー!! 「あ!!!」 「あ! じゃないでしょ! あんた何やってんの!?」  我が子を取り上げ母無双。その迫力に三咲兄妹は黙った。 「空気の読めないお兄ちゃんが聞いてるよ! 『何しに来たの?』って!」  え? その前に俺、お前の夫じゃないの? あと空気読めないって何? とショックを受けるお兄ちゃんの前で妹は真っ赤になった。そして隣を見るとあーあ。の顔をしている彼氏と目が合う。あ。ごめんなさい。  ごめんなさいーーー!!! 「あの、おにい!! …じゃなくておにに、お兄ちゃん!!」 「はい!?」  お兄ちゃん!? と、その呼び方にビックリしているおにい。 「えっと! あのっ、実は………その……」  あの…。…あの……あう…あ……あうあうあー。 「???」  一人だけ何も分からないおにい。頑張れ。の彼氏。しっかりせいや! の親友。ちー。暫くその視線に集中攻撃されながら彼女はしどろもどろに言った。 「じ、実は、たか、た、高埜さんと、け……け……」  しーん。 「け?」  不思議そうな顔でおにいは呟く。そこまで聞いて何で全く思い当たらないんだよ。と、一瞬嫁の怒りの視線が向いたけれども気付かないおにい。 「けっ、結婚、結婚した、た、した、いと、思って…て…」  やれやれ。と肩を下ろす彼氏。よし。と頷く親友。ちー。  沈黙。 「……えええええーーー!!??」 「ぎゃーーーー!!」  と、おにいの悲鳴の後にちーが叫んだ。いきなりの爆音にびっくりしたようだ。狂ったように泣き始めた我が子を何だこれと思いながらよーしよしと慌ててあやす母親。その前でおにいは椅子の背もたれにしがみ付きながら叫んだ。 「おま、ま、おま、それ、親に言ったのか!? 言ったんだよな!?」 「ま、ま、まだ言ってない…」 「言ってないーー!!!?? 何で先にこっちに来た!? え? 何で!?」 「ち…ち、ちーたんに一番に伝えたくて…」  もじもじ。と妹は呟く。ああ、それでか。と母親は納得した。それであんなに嬉しそうにべったりしていたのか。そういう事情なら返して上げたい、けど…うん。無理だな。ひぃぃーー!! という引きつけを起こしながら仰け反って泣いている我が子を見て、もう笑ってしまう。 「…何かすいません」  流石にこの状況に引きながら彼氏が呟いた。あなたは何も悪くないですよーー!! 「いえ! いえ!! え!? 高埜さん!? 本当に良いんですか?」 「はい」 「お前、大丈夫か!? ちゃんとできるのか? いいや、いや、そんな事よりおめでとうー!!!」  気が動転したままのお兄ちゃんは思ったことを全て駄々洩れにして祝福(?)してくれる。 「ありがとうございます。すいません。本当にすいません」  と、妹は机に伏せたまま小さな声で呟いた。
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