最後の魔法

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「俺、今月引っ越すんだ」 「え?」 「四月から東京の大学に通う。将来的に音楽専攻も選べる学部なんだけど」  電話口で息を呑む気配がした。  俺は目を瞑り、大きく息を吸った。 「俺がそっちに行ったら、また会ってくれませんか?」 「……いいよ。私も、会いたい」 「ほ、ほんとか!」 「うん。というか、ちゃんとタバコやめた?」 「やめたよ! もう喉壊す必要ないし! だからもう全然苦くないはずだし、アレが最後である必要も……」 「ば、馬鹿! 何言ってんの、もう!」  照れ隠しに怒ったような雨宮の声がする。可愛くて、愛おしくて、もっと聞きたいと思った。  だから俺は、欲しいと思ったそれに素直に手を伸ばすことにした。 「好きだよ。雨宮」
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