え?引っ越し?わたし座敷童なのに?

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私がフーフーと肩をいからせていると、様子を察したのかカフェ男がむくりを身体を起こして立ち上がった。 「そのガキ、どんなツラして居座ってんの?いい加減どかしてくれませかね。」 ハセガネは困った顔をして思案していたが、ふと何かを閃いた表情になり、ポンと手を打った。これまでないくらい一層の愛想笑いで私たち二人に顔を向けて、 「それいいですね!ツラを見る。良かったら座敷童さんのお顔を見てみますか?」 『え、見れるの!?』 憎たらしいことにカフェ男と声がハモった。 「はい、この眼鏡の拡張機能で特殊なカメラがありましてね。まぁ念写のようなものですが、それなりにしっかり映ります。お客様も座敷童さんを気に入っていただければ、追い出さなくて済むでしょう。」 「私はイヤって言ってるでしょ!」 「まぁまぁ、それは敵対心ゆえってこともあるんじゃないですかね。お客様が好意的になればあなたの気持ちも変わるかもしれませんよ。」 「ふーん、面白そうじゃないですか。ツラを拝んでやりますよ。生意気なガキなんざ引っぱたきたくなるだけでしょうけどねェ。」 「ちょっと、勝手に話進めないでよ!」 私の抗議も意に介さず、ハセガネは置いてあった鞄から黒い機械を取り出し、いそいそと機械に紙をセットし始めた。昔のインスタントカメラのような形をしており、確かにこれならできそうだ。 自分の姿を写真に撮られるのは始めてだ。 いや正確には写り込んでしまって心霊写真と騒がれることは無きにしもあらず(せっかくピースしてるのに)だが、撮影者の霊感によってたまたま起こる現象にすぎず、狙って写されるようなことは無い。 私は思わず髪と着物と整えた。 写ることが避けられないと悟ると、悲しいかな、どうせ撮られるなら綺麗に写りたいと思ってしまうのは女の性と言えよう。鏡を見て身なりを整えることも毎日やっている。無論物体としては鏡に映らず私自身しか認識できぬものだが、霊的存在とはいえ性別の自意識がある以上は、人間と同じ習性なのだ。 「さて、準備が整いました。座敷童さんこちら向いてくださいね。撮りますよー。」 「撮っていいなんて言ってないのに・・」 と、文句を垂れながらもカメラが向くとそれなりにポーズを決めてしまう。満面の笑みとはいかずとも、やはり怒りに歪めた顔を晒すわけにはいかず、軽く微笑む程度はしてやった。 ハセガネは昔テレビでやってたような念写の仕草そのままに、カメラを額の前にやってレンズをこちらに向けている。眼鏡からケーブルが伸びてカメラに繋がり、キュウウンと小さく音を立てていた。 「いきます。はい、チーズ!」 パシャッ 通常のストロボとは違った青いような光が瞬いた。 「はい、お疲れさまでした。」 ケーブルを外してカメラを抱えると、ジーッと音を立てながらゆっくりと写真が排出されてきた。ハセガネはカメラを鞄の上に置き、写真を手にとって私たちの前に差し出す。 三人で手元の写真を眺めると、全体的に灰色ががかってはいるが滲むように輪郭が映っていた。 「数分程度でハッキリと出てきますのでね。ちょっと待ちましょうか。」 彼の言う通り、ジワジワと色と形が明瞭になっていく。 これは確かにすごい技術だ。 「へぇ。ホントに撮れるんですね。色までちゃんと・・・ん?」 カフェ男が眉間にシワを寄せてまじまじと写真を覗き込んだ。 上の方が先に現れてきて、私の顔が見えてきた。 「女なのか。」 「ええ。座敷童には男子も女子もいるんです。あまり決まりはないようですね。」 「そうですか・・・・・でも・・・これって・・・」 写真はさらに色彩が強まる。 私の顔と上半身までしっかりと現れてくると、カフェ男はカッと目を見開いて、 「これ・・・・・・・・・・・・・大人!?」 素っ頓狂な声を上げた。
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