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フン、と私は鼻を鳴らした。
カフェ男は口をあんぐりと開けたまま写真を見つめている。
すでに私の姿を知っているハセガネが解説を始めた。
「ええ。まぁ。と言っても恐らくはギリギリ子供とも言える範囲として、18歳か19歳といったところでしょうかねぇ。このあたりわたくしにはよくわからないのですが、座敷童の定義として未成年は超えないものかもしれません。しかしまぁ体つきも立派に成長されてますし、だいぶ大人びていらっしゃいますね。」
私はウンウンと頷いた。
根拠があるわけではないが確信はしている。人間と同じスピードではないにしろ、200年の時の中で徐々に私の姿も成長していった。座敷童は子供である。子供は成長するものである。そんな人間の認識が私たちのような存在にも影響を与えているのだと思う。そして成長するとはいえ、座敷童が子供である以上は「大人」にはなれない。ではその限度はどこにあるのか。これもまた人間たちの思う認識に引っ張られ、かつては14歳や16歳だったが時代を経過するごとに変化してゆき、今は「未成年」として20歳が基準になっているということだ。年齢ごとの見た目もまたその時代の人間の認識を反映して。
私は限度いっぱいに成長した19歳11か月と自覚しており、今時のこの年頃を考えればほぼ大人と言っても過言ではないだろう。とまぁ、いずれにしろだ。
「ガキなんて言ってくれたけど残念でした。舐めてもらっちゃ困るわね!」
私は勝ち誇ったように言ってやった。
「ははは。これでお客様も座敷童さんのこと気に入っていただければよいのですが。」
「言っときますが、引っ越しは絶対しませんから!」
「・・・」
カフェ男はまだ写真を見ている。
腰から足にかけて下の方も明瞭になり、写真は一通り出来上がったようだ。
私もあらためて写真の中の我が身を確認する。
うん。キレイに写ってる。ファッション雑誌を覗き見た甲斐があったってもんよ。
未成年なんて人間の認識、法の定義なんてものに従っちゃいるけど、和服を着こなす立派な大人のモデルじゃない?
こうして写真になるのも案外悪くないわね。と、ひとり悦に浸っていたら、
「お客様・・・?」
ハセガネの声に遮られた。
カフェ男がハセガネの持つ写真に指を置いていた。
ちょうど私の胸のあたりだ。大人であることを強調するようにパツンと膨らんでいるところへ。円を描くようにススッと何度か撫でまわしたあと、ツーっと指を下の方に這わせる。片足を前に出したポーズで着物の裾からチラリと覗かせた生足に辿り着くと、サワサワと往復を始めた。
ムシュッと音がしたので見てみると、カフェ男は唇をとがらせて口だけの投げキスのようなことをしていた。チュパ・・チュパ・・とその仕草を繰り返し、頬を赤らめ、目じりを下げ、鼻をヒクヒクとさせ、目をトロンとさせながら、
「君なら居てもらってもいいよォ・・」
と写真の私に囁いた。
私はハセガネに顔を向け、ニコリとした笑顔で言った。
「引っ越します。」
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