【冥界の王女様】

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長女愛菜は、少し高めのヒールで、所々にラインストーンが散りばめられている真っ赤なサンダルを脱ぎ捨てると、どやどやと家の中に入った。   「あッ待っ……!」   慌てて伸ばした妖平の右腕が愛菜の肩を掴む事は出来なかった。   「あらやだ」   リビングルームに入るなり、愛菜は口元を抑えて何度か瞬きをした。   恐ろしく綺麗な御客人に、一瞬見とれてしまう。   「この度は世話になる」   大きなバックル付きのベルトを巻いたホットパンツに、派手な色のキャミソールを重ね着て、長い茶髪を緩く巻いてまとめた頭の天辺から、足の指先までアクセサリーがごちゃごちゃしている愛菜を一目して、瑠璃は一言そう言った。   「や、やだチョー可愛いんだけどー!」   弟である妖平と同じ年程に映る目の前の客人はまさに喋る人形。 愛菜は興奮気味にバタバタと歩み寄る。   「あたし愛菜。よろしくねぇー?」   「ああこちらこそ」   妖平は状況が掴めずにいた。 帰って早々、何故初対面の怪しい客に、姉はこんなにも打ち解けているのか。   「妖平! 何してんの。早くこっち来な」   リビングの外から固まって様子を見ていた妖平を愛菜が呼んだ。   「あんたいつこんな可愛い彼女作ったのよー。隅に置けないなあー!」   (……彼女!?)   愛菜は興奮の冷めない眼差しで妖平を見ると、がしがしと妖平の頭を撫でた。 石がたくさん付いた、スカルプチャーのピンクの爪が当たって少し痛い。   「彼女じゃ……」   「ゆっくりしてってね! あたしちょっとシャワー浴びて来るから」   妖平の言葉を遮ると、愛菜はリビングを出て行った。   「賑やかな姉だな」   瑠璃は楽し気に少し笑った。  
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