101人が本棚に入れています
本棚に追加
長女愛菜は、少し高めのヒールで、所々にラインストーンが散りばめられている真っ赤なサンダルを脱ぎ捨てると、どやどやと家の中に入った。
「あッ待っ……!」
慌てて伸ばした妖平の右腕が愛菜の肩を掴む事は出来なかった。
「あらやだ」
リビングルームに入るなり、愛菜は口元を抑えて何度か瞬きをした。
恐ろしく綺麗な御客人に、一瞬見とれてしまう。
「この度は世話になる」
大きなバックル付きのベルトを巻いたホットパンツに、派手な色のキャミソールを重ね着て、長い茶髪を緩く巻いてまとめた頭の天辺から、足の指先までアクセサリーがごちゃごちゃしている愛菜を一目して、瑠璃は一言そう言った。
「や、やだチョー可愛いんだけどー!」
弟である妖平と同じ年程に映る目の前の客人はまさに喋る人形。
愛菜は興奮気味にバタバタと歩み寄る。
「あたし愛菜。よろしくねぇー?」
「ああこちらこそ」
妖平は状況が掴めずにいた。
帰って早々、何故初対面の怪しい客に、姉はこんなにも打ち解けているのか。
「妖平! 何してんの。早くこっち来な」
リビングの外から固まって様子を見ていた妖平を愛菜が呼んだ。
「あんたいつこんな可愛い彼女作ったのよー。隅に置けないなあー!」
(……彼女!?)
愛菜は興奮の冷めない眼差しで妖平を見ると、がしがしと妖平の頭を撫でた。
石がたくさん付いた、スカルプチャーのピンクの爪が当たって少し痛い。
「彼女じゃ……」
「ゆっくりしてってね! あたしちょっとシャワー浴びて来るから」
妖平の言葉を遮ると、愛菜はリビングを出て行った。
「賑やかな姉だな」
瑠璃は楽し気に少し笑った。
最初のコメントを投稿しよう!