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瑠璃が笑ったのを見て黒夜は安堵の溜め息を漏らす。
あのまま妖平が殺されでもしたら一大事だからだ。
「黒夜、お前そろそろ帰ったらどうだ」
瑠璃は冷たい目で黒夜を見ると、そう言った。
「い、いえ……まだコチラに来たばかりですので心配が……」
「案ずるな」
何か続けたそうな黒夜の言葉を瑠璃はぴしゃりと遮った。
「し、しかし!」
黒夜は眉を潜めながら滞在をアピールしたが、瑠璃は何も言わない。
「かしこまりました……」
少々目を潤ませると、何かあれば直ぐに駆け付けますと言い残し、黒夜は杉浦宅を出て行った。
「おい! なんであいつだけなんだよ、お前も帰れよ!」
妖平は事態を全く理解出来ずに慌てた。
「残るのは私一人でいい」
瑠璃はシラッとそう言うとテーブルに両肘を置き、頬杖をついた。
おしとやかで上品な見た目とは裏腹の、したたかな瑠璃を知った先程から、妖平は身の危険を感じて止まない。
(マジ勘弁して……)
一体この異人は妖平に何を望んでいるのか。
平凡な学生生活を、非凡に変える冥界の王女様こと死末瑠璃。
地球に選ばれた妖平の使命とは!?
等と予告風に切り上げて、さっさと現実に還りたい妖平であった。
「いずれ帰るさ。お前と一緒にな」
妖平を見つめながら細く笑う瑠璃の顔は、この上ない程に綺麗だった。
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