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杉浦宅前の修羅場を耳にする近所住人は居ない。
かなりの田舎であるこの場所は、各家の土地も広くそうそう隣接していなかった。
杉浦宅から一番近い家は五十メートルも離れた川沿いにある。
ダンダンダンダンッ……。
ダンダンダンダンッ……。
『ベシンッ!』
「…………ッ」
少女は怒りに涙ぐんだまま二階へ上がると、軽く身仕度を整えて戻って来た。
そして少年を思い切りひっぱたいたのだった。
「最悪。二度と来ない!」
「おい真希ッ!?」
え?なんで俺??
少年には何がなんだか判らずただ茫然と、走り去る少女の背を見送りながら立ちすくんだ。
「上がらせていただく」
黒髪の少女は何事も無かったかのように杉浦宅へ執事と共に上がり込んだ。
「……!? ってオィ!」
慌てて少年も家の中に戻り杉浦宅前の喧騒は幕を閉じたのだった。
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