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不審者を見る目付きそのもので妖平は瑠璃と執事を交互に見た。
色白でスラッとした四肢を持つ瑠璃の髪は真直ぐで腰程まである黒髪で、瞳も同様に漆黒を纏い切れ長の造形をしている。
通った鼻筋とほんのり色付いた口唇。
身体に纏わせているのが黒くて細い作りのワンピースドレスでなく着物だったら、日本人形の様だ。
執事は灰と白の交ざった髪を短めに整えていて、鼻の下に蓄えた髭も同色で僅かに口元にかかっている。
閉じているのか開いているのか分からないくらい細い瞳は、先程怒鳴っていた際には物凄く力のある深い茶だったように見受けられた。
「まぁしばらくは此所に厄介になるが」
余りの少年の気の利かなさ加減に耐え兼ねて、執事が用意したティーカップに入った紅茶を口にしてから瑠璃が沈黙を破った。
「は? 何言ってんの? さっさと帰ってくれ……」
妖平はあからさまに嫌な顔をしてそう告げると席を立とうとした。
「どうせ誰も居らなんだ。私と黒夜くらい住まわせても問題無いだろう?」
「誰も居るっての! 親父とお袋と姉貴が!」
立ち上がった勢いでテーブルから降ろした両手をテーブルに叩き付け妖平は言う。
「どうだかな……」
瑠璃がフッと怪しげな笑みを浮かべた時だった。
トゥルルルル。
トゥルルルル。
唐突に一本の電話が入った。
妖平は戸惑う。
「どうした? 出ぬのか?」
笑みを崩さない瑠璃に促される形になりながら妖平は受話器を取った。
嫌な予感とは意外に当たる仕組みになっている。
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