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包みの中には柘榴の様な朱を纏い、キラリと光る小さな石が一粒在った。
瑠璃の手の中で鈍く光る石を見ると、妖平は心なしか胸騒ぎがするのを感じていた。
「これはお前だ」
「……は?」
妖平を見つめたままの瑠璃はそう言うと、石を再び包みの中にしまう。
「お前が選ばれたんだ。 この星の人類分の一、という奇跡的な確率でな」
妖平には瑠璃の口から発せられる言葉の意味を、一つとして理解することが出来ない。
「私とお前が夫婦となることは、この星自身が定めたことだ。 恨むなら星を恨むのだな」
瑠璃は妖平から視線を外して、ティーカップに口を付けた。
「全く意味が分からないんだけど……」
人類分の一だとか、星が決めたとか……。
当然のごとく語る瑠璃の正体すら掴めないのに……。
「まぁ直ぐにとは言わない。焦らずとも崩壊はまだまだ先の話」
またしても意味の分からないことを口走る瑠璃。
妖平はただひたすらに姉の帰りを待つばかりだった。
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