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「ひ、ァ、んんんんーーー!」
しがみつこうにもこの姿のアスモデウスとは体格差がありすぎて、微かに背中に手が届くくらいだ。
ガタイの良すぎるアスモデウスに支えられていなければ床に落ちてしまう。
「はっ、嫌がっていたわりにはよく咥え込んでいるな。締め付け具合も最高に良い。風呂までこのまま頑張るんだな」
「ふざけ……っん、な」
「なら条件を変更して、ここで皆に見られたままで何戦か交わってからにするか? 俺は地上で慣れてるから構わんが」
「抜、け」
「お前、自分が今仕置き中だというのを忘れていないか?」
怒気のこもった声音で問われ、碧也は口を引き結んだ。
「どうなんだ? 仕置きだろう? 違うか?」
今度は諭す様に問われる。
「悪かっ……た……っ、のまま、……く」
「聞こえんな」
容赦のない一言で一蹴され、碧也の表情が悔しそうに歪む。
「オレが悪かった。このまま、……っ、風呂まで、連れてってくれ」
「そうだろう? ほら、エレベーターまであと二十メートルくらいだ」
そう言われて覚悟を決めてみたものの、やたら長く感じた。
「ん、ぁ……っあ」
アスモデウスが歩を進める度に、緩やかな動きが刺激となり腹の奥が甘やかに疼く。
「声を出していいのか? 先程よりも多くの連中に見られているぞ」
「くっ……、ぅあ、あ」
今度はアスモデウスに結腸まで犯され、碧也の内部が引き攣って蠢く。
前で絶頂を迎えると、連動しているかのように内部でも達する。それからはイキっ放し状態となり、声を殺している余裕などなくなった。
「あ、あ……っ、ん……ん、ぁア!」
惜し気もなく声を発し、碧也の表情が蕩けていく。
「見られて感じているのか。この好き物め。これじゃ仕置きにならんな」
さも愉快そうに笑いながら言われる。
「いっその事部屋にも観客席を作るか?」
「んな……ッ趣味は……、ァ、ねえよ」
フルフルと左右に首を振れば、内部から陰茎を引き抜かれてまた担がれた。
「そうか? その割には雄を誘うだいぶ感じいった顔をしているぞ」
余韻で碧也が体を戦慄かせていると、扉が開く音がして視線を向ける。
「ほら、着いたぞ」
どうやらここからはエレベーターに乗れるらしい。
——助かった……。
地面に下ろされ安堵の吐息をついたのはいいが壁に手をつかされて、片足を持ち上げられる。背後から再度陰茎を挿入された。
身長差で足が浮いてしまい、碧也は足を泳がせる。
「とりあえず一回イかせろ」
先程までの緩やかさなどカケラも見えないくらいに律動され、パンパンと皮膚を打つ乾いた音がエレベーター内に響き渡った。
「ひ、ああああ、ああっ、アアア‼︎」
快楽を逃そうと思わず逃げ腰になるものの、すぐに引き戻される。
「こら、逃げるな。お前はイキっ放しで良い思いをしてるかもしれんが、俺は寸止め状態だったんだぞ」
両腰を持ち上げられて揺すられると、体さえも支えきれなくなってきて肩を壁に押し付ける。すると、アスモデウスと向かい合う形に体位を変えられ、床に座り込まれた。
それに伴い奥深くまで陰茎を呑み込むはめとなる。
内部を擦られた衝撃で快感もピークまで膨れ上がって碧也が潮を噴く。耐えきれずに悲鳴混じりの嬌声があがった。
「う、あああっあああ!」
体がガクガクと震えるのを止められない。こうもずっと快楽しか与えられていないと頭がバカになりそうだった。
「勝手に怪我をするな。お前のその皮膚一枚残さず全て俺の物だ。良く覚えておけ」
「お前……が、ガン掘りしなきゃ……っ、あ……怪我……ッしてない」
擦り切れた肩に口付けられ舐め上げられる。患部が熱くなったかと思いきや、ひりついていた痛みが消えた。
自己治癒機能どころか他人にも施す事が出来るらしい。
「他に痛い所は?」
「……ない」
問いかけに答えると同時に、律動を開始される。
「その前にお前が暗殺をしくじらなければ良かった話だろう? 仕置きが嫌ならちゃんと俺を殺せ」
軽く口付けられた後、一突きで最奥まで挿入された。
「あああ、ァ、ああっあああ!」
内部いっぱいいっぱいに陰茎を咥え込み、突き上げられ続けると余す事なく良い所を全て擦られる。絶頂を極めたまま、また戻って来られなくなった。
もう何処からが絶頂で何処からが普通の状態なのか分からなくなってくる。
高みに昇ったまま降りて来られない気がして不意に怖くなった。
「もう……っ、イきたくなっ……、ぅ、ああああ、嫌だ、アスモデ……ウスっ、頼むっ、から。もう……イ……っきたくな……、ァア!」
「そうかそうか。なら、俺が出すまで際限なくイけ」
「くそ、死ね……っ。お前なんか……嫌い……っだ」
愉しそうに目を細めて見せたアスモデウスが口角を持ち上げた。
イクまでの間中本当にイきっ放し状態にされ、腹の奥が熱くてアスモデウスの陰茎を締め付ける。
「っ、ぁ、ん、アア!」
「碧也」
「ん、んっ」
嬌声を口付けで遮られる。
息をしている暇さえ与えられずに、顎の関節を抑えられたまま口付けられ容赦なく下からも突かれた。
程なくして内部で欲が弾ける。
漸く唇を解放された時には、全力疾走した後の様に息が乱れていて、酸欠で目の前が眩んだ。
「はぁっ、はあっ、……ん、ッあ!」
アスモデウスが愛おしい者でも見る様に目を細めて口を開く。
「碧也」
——ああ、本当に調子が……狂う。
人の言い分は全て却下する癖に、そんなじゅくじゅくに熟れた果実のような甘ったるい声で、名を呼んで欲しくない。
無性に胸のあたりを掻きむしりたくなって、その衝動を押さえる為に碧也もあえて名を呼んだ。
「アスモデ、ウス」
離された唇を追って自ら口付ける。
こうして口を塞いでおかなければ、何かしらの言葉を紡いでしまいたくなるのが嫌だった。
運命の番という、理解不能な関係だけで睦言を交わしたくない。必要ない。それならまだ犯され、肉欲だけに溺れている方がマシだ。
「ぅ、ん、ァ」
舌を絡ませあい吸い上げて、碧也はアスモデウスを煽るように自ら大きく口を開く。互いの口内を使って舌で遊びを仕掛けるように口付けあった。
「は、ン、ンン」
——何をしてるんだオレは……。
頭が馬鹿になってしまったとしか言い様がなく、自嘲ぎみに笑んだ。
〝運命の番〟にだけ甘い男。
そんな繋がりなんて無くなれば、今の一時さえも無意味なものになるというのに。
勘違いだらけの恋情にも似た感情と、性欲に溺れるだけ後々虚しくなるのは分かっている。
——何の生産性もない不毛な関係は要らない。
昔から無意味な行動は好まない。時間の無駄だ。
早く目的を達成して、終わりにしてしまった方が良い。碧也は目を閉じると、アスモデウスに上半身を倒した。
抱きしめられて髪をすかれる。たったそれだけの事なのに気持ちが上向いた。
運命の番だから、という言葉がのし掛かる。
微かに痛みを発する胸の中にあるのは一体何なのだろう。
自分の感情さえも擬似的な物なのか本物なのか知り得ない。いつか消えるのならこんな温もりなんて知りたくなかった。
——オレには必要ない。
加虐的かと思えば、優しくもあり、また傍若無人な振る舞いをする。アスモデウスが自分の心に住み始めているかもしれないなど認めたくもない。
「また俺以外の事に気を取られているのか?」
「別に……そんなんじゃない」
——お前の事を考えていたと答えれば、この男はどんな顔をするだろうか。
「なら、何だ?」
「お前には、関係ない」
そう言うとアスモデウスが舌打ちした。
そこから察せられる感情は、確かに嫉妬から来る苛立ちだった。
——そんな顔するな。
両手を伸ばして、アスモデウスの髪をかきあげてやって頭を撫でる。
少し驚いた表情をした後に、アスモデウスが口元に笑みを浮かべた。
——その顔もやめろ。愛しむような表情なんてお前には似合わないだろ。
本当に愛されているような錯覚に陥りそうになって、居心地が悪い。
「お前の気を引く地上にあるモノは全て壊してしまおうか。何もなくなったら地上に行きたいとも思わなくなるだろう?」
キツく抱きしめられて囁かれた。
執着から来る破壊的衝動の意欲を見せられても、己が持っている物はもうとっくの昔に全て壊れている。
昨夜寝込みを襲いきれなかった時から、互いがおかしくなり始めている気がした。
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