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「待って!」
キスの空気になったとき、彼女が僕の口元に手を近づけた。
「私も君も、これが初めて……だよね?」
「う、うん。そうだけど、どうしたの?」
「せっかくだから、ゲームをしようよ」
「え? ゲーム?」
「ファーストキスは苺の味とかレモンの味とか、いろいろ言われてるでしょ? だから、実際はどんな味がするのか、予想してみよう」
明るくて天真爛漫で、一緒にいて楽しい彼女。
だけど、まさかファーストキスまでひと工夫してくるとは思わなかった。
「もちろんいいよ。じゃあ、僕はりんごの味」
「私はチェリー!」
お互いに予想して、真剣な、でもしあわせな空気に包まれる。
彼女がゆっくり瞼を閉じて、僕はそっと顔を近づけた。
数秒後、ぱっと唇を離す。
「なんの味がした?」
桃色のほおにうるんだ瞳でかわいく聞いてくれたが、
正直なんの味がしたかなんて、ときめきで全くわからなかった。
ただ、とびきり甘かったのはよく覚えている。
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