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「お隣失礼します、やよ」  独特な語調で話す女の子によって、僕は起こされた。わざわざ揺り起こして、確認を取ったようだ。  ピンク色に染めた女の子とは、思えないほどの律儀さ。おっと、偏見か。  あーでも、そういう種族かもしれない。  多様化が進んだというのに、自分の価値観は未だに古いまま。  良くないな……。 「気持ちよさそうに寝てました、やよ。お疲れさん状態です?」    隣に座るや否や。  閉じかけていた口を再度ぱくぱくさせて、また癖のある言葉遣いで話す。  もう一度寝ようとしていたが、話し掛けられた以上、言葉を紡がないわけにはいかない。  僕としても、後二つ駅を超えれば降りないといけないから、ちょうど眠気覚ましにはいいように思う。 「まぁね。学園生活とかバイトで忙しくてさ、ろくに睡眠がとれてないんだ」 「あらら。それはご愁傷様です、やよよ」  本当に同情心があるのか、その不思議な言葉遣いからでは、なんとも言えないが。  女の子の表情から伺うに、心配はしてくれているみたいだ。 「一応、ありがとう?」  「なぜ疑問形! 心からの同情心を伝えたつもり、やよよお!」 「あ、そう? 僕には分からなかったな」 「なにゅー、私もまだまだということか~。そっか~うんうん」   よく分からないが、なんか納得している。ちょっとした意地悪のつもりが、こうも真剣に受け取られるとは。  意外と天然なのか。  
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