意識しちゃう

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 だけど、余程私の返しが気に入らなかったのか、未だ不服そうな表情を浮かべている鳴海。 「もう、何よその顔。言いたいことがあるなら言ってよね」 「言ってもどうにもならねーから言わねぇの」 「じゃあ逆に聞くけど、鳴海はどうなのよ? どういうのがタイプなわけ? 私に求めた模範的な回答を教えてよ」  私ばかり聞かれるのも面白くないと、鳴海はどうなのかきいてみたのだけど―― 「――お前」 「え……?」  びっくりした。  私は今、どういうのがタイプ? と聞いた。  その返しが“お前”……それって……!  真面目な顔して真っ直ぐ見つめてくる鳴海から視線を外せない私がもう一度聞き返そうとした、その時、 「お前――とは正反対の人」  急に口角が上がったかと思えば、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた鳴海は「私と正反対の人」という意地の悪い答えを返してきた。 「なっ、何よ、もう! びっくりしたじゃない! 最低!」 「何だよ、そんな怒るなって。ちょっとした冗談じゃん」 「冗談も内容によるわよ。たちの悪い冗談止めてよね!」 「はいはい、悪かったよ」  最悪だ。すっかり騙された。  そりゃそうだ、鳴海のタイプが私のわけが無い。  だけど、私なのかと思った時、びっくりしたけどときめいたのは、鳴海には内緒。  何でときめいたのかは分からないけど、凄く、ドキドキしていた。 「さてと、そろそろ行こうぜ」 「あ、ちょっと待ってよ」  可笑しそうに笑った鳴海は飲み物を飲み干すと、そろそろ行こうと席を立ったので、私も残りの飲み物を一気に喉に流し込んでからゴミを捨て、私たちは店を後にした。
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