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桂城の移したものか自分の生んだものか。篠宮の中で燃える熱が、冷たい雪の結晶を暖かい水滴に変える。
篠宮は起き上がって自分の腕に落ちた白い点描が透明な液体に変わっていくのを不思議そうに眺めていた。
大きな音を立てて桂城が窓を閉めベッドに戻ってくる。クリスタルガラスのグラスの中には無造作に雪が詰め込まれていた。
「…」
褐色の液体が注がれる。篠宮の視線の先でそれは雪にゆるりとした模様を加え混ざり合っていく。
「すぐに薄くなるのが、難だな」
桂城は篠宮の唇に冷たいグラスを押しつけると有無を言わさず傾ける。篠宮は少し顎を反らせて、コクリと喉を鳴らした。
結局、グラスを一気に空けさせられて、篠宮は眉を顰めたまま大きく息をついた。
胃の中が焼けつくように熱くなってくる。舌の上にはまだ雪の感触と冷たさが残るのに身の中で酒が燃える。
雪が、燃える。
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