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あれだけ切り込んできた雪の冷たさを桂城は燃やしてしまう。
「…貴方は…不思議な…人ですね…」
ゆっくりと言葉を探した篠宮に、桂城は笑ってしまった。あまりに素直な声だったので。
右手を伸ばし押すと、簡単に細い背はシーツに倒れ込んだ。飲まされた酒に熱をもち始めた身体を抱き込んで、桂城は囁いた。
「それはな、お前次第なんだよ」
もう十分に熱くなってしまった篠宮の息が乱れるのにそれほど時間はかからなかった。ゆるやかな緊張を帯びた足を割ろうとしていた桂城の動きが止まった。
「…止まったな。…もう一度かけるか?」
もう音楽など聞こえない。篠宮は小さく首を振った。
曲などに託さなくても、雪の夜には桂城の記憶が焼きつけられて決して消えていかないだろう。篠宮は自分に灯されたその熱を強く感じていた。
白い孤独な世界の中で、恋情が燃える。
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