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自分はどこに行こうとしているのだろう。振り返ると足跡は消えていた。それほど長い間立ち尽くしていたのだろうか。
冷たさに身は凍えそうだ。肩や髪にうっすらと積もった雪を払うと、指の感覚が無くなっていることに気づく。
篠宮の瞳もゆるゆると冷えていった。
それからどれくらい時間が経ったのだろう。彼はいつの間にか、慣れた場所に立っていた。
少年のような寝顔だといつも思う。邪気のない思う存分眠りを貪っている顔。部屋の中は空調が良く効いて暖かかった。
ぽたり、と自分の髪から雫が落ちて、篠宮は身を起こして二、三歩下がった。床に転がった酒瓶を起こし、足音を忍ばせて階段を降りる。
濡れてしまったコートをどこに置いたらいいか、篠宮はしばらく考えた。
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