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案内された部屋で、青年葉風の膝の上を陣取り座る幼児ロンカ。机を挟んで対面のソファーに座る叔父の早瀬は、苦笑を浮かべてその様子を見ている。
「葉風も(ロンカに父と呼ばれて)困惑していると思うんだけど、何から話せばいいのか……。まず、ロンカの母親は、俺の姉の世羅。ただ、今は療養中で、地上ではなく天界で暮らしている」
元々天界から家出して地上に降り立った世羅は、ある日、地上で記憶喪失の青年と出逢い、恋に落ちたと早瀬は続ける。
「虹色の光をその身にまといながら、背中にほんのり緑色を帯びた鳥のような翼を生やした青年が、割れた空間から落ちてきたらしくてな、自分と同じように天界から家出してきた天使か、異世界から時空を越えてやって来た迷子のどちらかだろうと思ったらしい。世羅は、記憶喪失の青年に『リョクジュ』と名付けた。それがロンカの父親だ」
そのリョクジュは、現在行方不明なのだという。
「そのリョクジュという方と、僕が似ている、と?」
「あー……似ているというか」
早瀬はそこで言葉を切ると、ロンカへと視線を向けた。叔父に見つめられた幼児は、こてんと首を傾げて不思議そうに見つめ返している。
「本人、だと」
「ちょっと待ってください。僕、まだ十九歳ですよ? 心当たりも全くありませんし」
そんな不誠実な恋などしていないと、葉風はロンカの父親本人が自分説を即座に否定する。
「思うんだけどなぁ……。二十歳の誕生日。鍵はその日だと思う」
片手で頭を押さえながら告げる早瀬のその様子からして、冗談を言っているわけではないらしい。
「葉風の誕生日までに、療養中の名目で実家(天界)に連れ戻されている世羅を呼び戻せるよう俺も頭の固いジジイどもの説得を続けるから、今日の答え合わせは、その日まで預からせてもらってもいいかな?」
「……はぁ」
困惑しつつも、葉風はとりあえず了承した。
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