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青の賛歌
ぼくの家族は冷え切っていた。
お母さんはほとんど部屋に籠もり、お父さんは何も言わない。だからなのか、ぼく自身も冷めていた。きっとぼくは、何にも興味を示すことができずに、淡々とした人生を送るのだろう。いやだけど、仕方ない。これがぼくなのだから。
そんなぼくを変えてくれた言葉があった。
「猛くんは歌が上手だよね」
公園のブランコで、隣に座る静香ちゃんが、朗らかな笑みを見せて言った。サビのメロディーがどうだったっけ、とか、そんな話になり、ぼくが実際に歌って見せたのだ。褒められる経験が少ないから、どうにも慣れない。
他の子たちが遊具や砂場で遊ぶ声。キイキイ、とブランコが擦れる音。それらが聞こえたけれど、ぼくは静香ちゃんの声に耳を傾けていた。はっとなり、ぼくは目を逸らして話した。
「そうかな」
「うん。別人みたいに、楽しそう」
「それは……」
別人か。ちょっとひどい。ただまあ、確かに好きな曲を歌えるというのは、楽しい。けれどそれは、逃避、というものに近いと思う。そんな気持ちを正直に話した。すると静香ちゃんは小首をかしげた。
「それって、いけないことなの?」
「え?」
「楽しいという気持ちに、嘘はないんでしょう? だったら、それで良いんじゃないかな」
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