キシ 一歩目「街角パン屋ふんわり色堂」

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とりあえずさっきの人たちが来た方へ歩いてみることにする。 少し歩くとまた一人先ほどの紙袋をもった学生とすれ違う。方向は合ってそうだ。 そしてさらに少し進むと、見つけた。 住宅街の間、山の方向へ伸びる二本の道、Y字路のその真ん中に三角形のパン屋はあった。 「ふんわり色堂・・・。」 看板にはそう書かれている。色堂と書いて“しょくどう”と読むのだろうきっと。 良い名前じゃないか。そう思いながら古都はOPENの札がかかったドアを開ける。札はウサギが抱えたようなデザインでかわいらしい。 「いらっしゃいませー」店内奥のレジにいる中年の女性がそう言った。 そして、その声と共に温かな香りが古都の脳を刺激する。 店内を見渡すと思ったよりも奥行きがあり想像したパン屋よりも広々としていた。 なにしろ驚いたのは、イートインのスペースがある上にカフェ的要素もあるようでで、奥のカウンターでマスターがコーヒーを淹れていたのだ。イートインのスペースには男子高校生が数人、勉強しながらパンとコーヒーを楽しんでいる。お昼時だからか他にも店内には若い女性や子連れの家族が居て賑わっていた。  これはなかなかいい場所を見つけてしまったぞ。  早速古都は入り口に置かれた消毒で手を清潔にし、すぐそばのトレーとトングを取る。  一見したところ、右手窓際には甘い系のパン、左手には総菜系、さらに真ん中には他にもチョコでコーティングされたものなどが置いてある。種類はかなり豊富だ。 そして、店の形も相まって窓際のパンたちには良い感じの光が当たり、輝いていた。きっと手に取るとちょうどよく暖かいだろう。
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