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「これで良し。じゃあ、ジョウロ返してくる」
「ングング…ゴクン!はあーい!」
「千夜くん、先に戴いています」
山村と鈴木は、本当に先に弁当を食い始めているが、そうする様に言ったのは俺自身なので、黙っておく。
と、ハウスの中に入ると、飯を食い終わったのか渡辺がジョウロを取りに来たところだった。
「千夜くん。早速、水やりしてたの?」
そう訊いてきた渡辺は、どこか嬉しそうだ。
俺は丁度良いから、持っていたジョウロを「ほらよ」と差し出して、頷いた。
「ついさっき、伊藤先生にキミ達の事を話したら、そういう事情なら構わないって許可をもらったよ」
「サンキュー、渡辺。鈴木と山村…あー、あのチビな?2人にも伝えとく。…もう飯、食い終わったのか?早いな」
渡辺の表情が曇った。
「春日部先生に睨まれてると食欲が湧かなくて…。それに、千夜くん。キミと鈴木くんの姿が見えない事を気にしていたから気をつけて」
春日部が?
そりゃ厄介だな。
伊藤先生はまだしも、春日部に事が知れたらヤバい気がする。
「わーった。渡辺も体調には気を付けろよ」
「ありがとう。水やりだけしたら、教室に戻るよ」
そう言葉を交わし、渡辺と別れた。
花壇の傍まで戻ると、山村と鈴木は楽しそうに笑いながら、飯を食っている。
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