盗まれた笑顔の花

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盗まれた笑顔の花

そして、種を蒔いてから約6週間後。 笑顔の種は、遂に笑顔の花になって開花した。 「…通って良し」 どこか、つまらなそうに、きちんと制服を着て来た生徒たちに、そう言う春日部。 笑顔の花が咲いてから、不思議な事に校則違反する生徒たちが激減したのだ。 それだけじゃねー。 本当に生徒たちに笑顔が出てきた。 休み時間も談笑してる生徒たちが増えた。 まるで、あの暗かった時期が嘘の様に。 春日部達教師も、生徒たちが問題を起こしている訳じゃねーから、渋々その様子を遠巻きに見ている。 そして、入院していた校長が退院して職場復帰した事で、春日部達は完全に大人しくなったと思われた。 だが、その矢先…。 昼休み。 いつものように下駄箱前の廊下で俺と鈴木は山村を待っていた。 「最近、学園の様子が良い方へ変わりましたね」 「鈴木も、そう思うか?俺も、そう思っていたところだ」 「笑顔の花のお陰でしょうか?」 「鈴木にしちゃあ、愚問だな。言うまでもねーぜ」 と、廊下の向こう側から弁当箱を持っていねー方の腕を大きく振って山村が歩いて来る。 「おせーぞ!山村!」 「ごめーん!授業でわかんないところがあったから、伊藤先生に訊いてきたんだー」 「それなら鈴木に訊きゃ良いだろ?」
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