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「落ち着け!千夜!春日部先生は花を盗んではいない!」
後ろから耳元で聞こえてきた声は伊藤先生の声だった。
「春日部じゃなけりゃー他に誰が居るんだよ?!」
尚も暴れながら叫ぶと伊藤先生は小声で俺に耳打ちした。
「…私だ」
その声を耳にした瞬間、信じられねー思いが俺を満たした。
「な…に…?」
何故…?
俺の全身から力が抜ける。
伊藤先生は、そのままズルズルと俺を引きずって職員室の隣の生徒指導室のドアが開いているのを良いことに中に入った。
と、いつの間に来ていたのか鈴木がドアを閉める。
「保ー…」
山村の声も聞こえる。
伊藤先生は俺を半ば強引に椅子に座らせると、ようやく俺の身体を離してくれた。
「いやあ、凄い力だな、千夜。正直、振り解かれるかと思ったよ…」
見ると伊藤先生は汗びっしょりになって額を腕で拭いている。
「伊藤先生…何でだよ?!何で花を盗んで…!」
「…話は最後まで聞いて欲しい」
伊藤先生の静かだが、真剣な声色に俺はノドまで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
俺の両隣には鈴木と山村が。
正面には伊藤先生が座った。
「鈴木と山村には言ったんだが、昨日の放課後、見てしまったんだよ。…春日部先生が千夜と山村の様子を見下ろしているのをな」
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