14人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、良い事ばかりじゃなかった。
昼休み。
教室で鈴木と飯を食っていると、「保ー…、鈴木くん…」と、廊下から山村の涙声が聞こえた。
見ると山村が、どういう訳か泣きながらドアの所にいる。
「どうしました?!山村先輩!」
鈴木が箸を置いて駆け寄った。
俺も何事かと鈴木に続いて廊下に出た。
「伊藤先生が…っ、伊藤先生が…っ!」
泣きじゃくる山村の言葉に俺は嫌な予感がした。
「山村先輩。落ち着いて下さい。伊藤先生が、どうかされましたか…?」
そう言う鈴木の声も緊張からか固くなっていた。
「引き継ぎして、今月いっぱいで辞めちゃうんだって…っ!」
「そんな…」
鈴木も呆然としている。
「何でだよ?!伊藤先生は何も悪かねーじゃねーか!」
「わかんないけど、イッシンジョーの都合だって…っ」
「それじゃあ、わかんねーよ!!」
俺は理由を訊こうと廊下を歩き出した。
と、鈴木が前に立ち塞がる。
「どこへ行くんですか?!」
「職員室。伊藤先生に退職の理由を訊いて来る!」
「行ってもプライバシーの問題で応えてくれませんよ!」
「もしかしたら昨日の俺のせいかもしれねーじゃねーか!」
「だとしても、他の理由でも、今の僕達に出来る事は無いです!」
「他の理由ったって…!」
最初のコメントを投稿しよう!