笑顔の種

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鈴木は教科書やノートをカバンに入れ終えると片手で持ち、後ろの席の俺の方へ振り返った。 「千夜くんは強いですね。僕も事有る度に肩を揉むのはやめてほしいと申したいです…」 「言ってやりゃー良いじゃねーかよ?気安く触ってんじゃねーって」 「千夜くんの様には、なかなか言えませんよ…」 鈴木も他の生徒たちも春日部達教師に完璧に萎縮しちまってる。 どいつもこいつも、それでも漢か! そう思うと、今朝の山村の方が、よほど漢気有るな。 「まあ良いや。早く行こうぜ」 「はい、そうしましょう」 俺と鈴木は揃って教室を出ると、体育館裏に向かった。 山村を待つのが何故、体育館裏なのかは訳がある。 ひと目につかないのは勿論だが、俺は煙草を吸う為。 そして、優等生の鈴木は、唯一の校則違反をしているからだ。 その校則違反とは、野良犬にエサをやる事。 春日部達教師に知れたら、野良犬は間違いなく保健所に連れて行かれちまうだろう。 そしたら、鈴木は崩壊する…。 俺は、その事を懸念していた。 だからこそ、野良犬は体育館裏で隠してエサをやっていた。 「エサですよー。…あれ?」 鈴木と体育館裏に着くと、いつも鈴木に向かって駆け寄ってくる野良犬が、今日はどうした訳か、体育館裏の隅で何やら地面の匂いを嗅いでいる。
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