本編

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「‥‥え、」 川瀬の発言に、俺は耳を疑った。 「今、何て言った?」 「ですから、さっきのは特別で。 岸野さんが俺を本当に好きになるまでは 俺は指一本触れません。キスやSEXが 先行する関係にはなりたくないんですよ」 川瀬は微笑み、俺を見つめた。 「それとももう俺のこと好きになりました?」 「‥‥確実に」 「はい」 「意識はしてる」 「ありがとうございます。その言葉だけで 今は充分です。岸野さんとは一時的な 付き合いをしたい訳じゃないので。 少しずつ俺のことを、岸野さんのことを 知っていった上で結ばれたいんです」 って、男前過ぎだろ。 最終のバスで帰っていく川瀬を見送り、 自宅に戻った俺はひとり風呂に入った。 誕生日の夜、予期せぬ展開で恋人ができた。 これから時間をかけて絆を深めていける、 そんな相手になってくれたら俺も嬉しい。 9年という期間は長かったが、 待っていた甲斐があったのかも知れない。
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