21人が本棚に入れています
本棚に追加
土曜日の朝。
俺は駅行きのバスに揺られていた。
今日は川瀬との初めてのデート。
行き先は川瀬に任せた。
世代が近いとはいえ、
嗜好の違いは多分にありそうなので
どこに連れて行ってくれるのか楽しみだ。
待ち合わせ場所は駅の改札口、
バスを降り、足早に向かった先。
川瀬の姿を一目見た瞬間、足を止めた。
淡いブルーのジャケット、白いパンツ。
物憂げそうな眼差しから垣間見える色気。
すぐそばに立つ若い女性が、
川瀬を意識しているのが見て取れた。
何だ、あの男は。
会社での陰キャメガネからは想像できない。
確かに背は高いし、スタイルも良かった。
でもこれは想定外だ。
「岸野さん、おはようございます」
俺に気づき、微笑む川瀬。
「お、おはよう」
派手に浮足立つ自分を自覚しながら、
川瀬の隣に立った。
「朝ごはん、食べました?」
「いや、まだ」
「少し電車に乗りますが、俺の行きつけに
ご案内しますね」
そう言って改札機に定期をスマートにかざす
川瀬の後ろ姿を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!