本編

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それから俺たちは 超絶オシャレなカフェでお腹を満たし、 帽子と靴下を買いたいと言う川瀬と 裏原宿を巡った。 「岸野さんも買いませんか」 帽子ひとつ持たず、 3足1000円のお手頃価格靴下しか 買ったことがない俺は、更に川瀬が かっこよくなっていく様を眺め呆然とする。 「会社のお前が何故あんなに地味なのか 知りたいよ」 「え?会社は働きに行くところだからです」 川瀬に即答され、目眩がした。 「夕方になったら雨が降るみたいですね」 「そうなの?」 「傘は折り畳みがあるんで一緒に。岸野さん、 渋谷に行きますが疲れてません?」 「大丈夫。渋谷まで歩いて行くの?」 「岸野さんの体力次第です」 「全然平気。歩こう」 会社と自宅の往復に使うのはバスだけ。 全く運動しないし、たまには歩きたかった。 「ずいぶん買ったね」 「帽子と靴下だけですよ?俺は実家暮らし なので、岸野さんより自由になる金は ありますけどね」 「川瀬、兄弟はいる?」 「独立しましたけど、3つ上の姉がいます。 岸野さんは?」 「俺はひとりっこ」 「へえ。兄貴肌だから、弟がいるのかと」 とそんな風に会話を続けながら、 渋谷を目指した。
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