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「皆、ありがとな。ずっとおひとり様なのは
俺だけかと思ってたよ」
「岸野さんはどれくらい恋人いないんですか」
佐橋に問いかけられ、素直に答えた。
「大学の時にちょっといたくらい。
もう9年近くいない。まあこればかりは
縁だからなあ」
「へえ。いいなあって思える人もしばらく
いない感じですか」
「うん。いないねえ」
「岸野はオクテそうだよな」
宮嶋が言葉を挟んだ。
「オクテなのかな。いなくても平気だった、
それが正しいんだけど」
「俺は彼女欲しいなあ」
「宮嶋ならすぐできるでしょ」
「俺も欲しいです、彼女」
「うんうん、秋津にもできるよ。大丈夫」
「岸野さん、好みのタイプは?」
佐橋が更に言葉を続けた。
「俺なんかどうです?」
「え、佐橋ってそっちなの」
驚きながらも気を取り直し、
年下は悪くないよな、と返事をした。
「岸野さん、兄貴肌なのに外見がかわいい
じゃないですか。俺、入社してからずっと
いいなって思ってました」
「‥‥マジで?」
予期せぬ後輩からのアプローチ。
満更でもない気持ちを抱いた。
「岸野、付き合ってやれば?」
宮嶋に微笑まれ、頷きかけた次の瞬間。
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