本編

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「どうぞ、上がって」 エレベーターを6階で降り、 玄関ドアを開けると川瀬を中に引き入れる。 川瀬は小さく頷き、レジ袋を揺らして 靴を脱いだ。 「持ってくれてありがとう。貸して」 先に靴を脱いだ俺は川瀬のカバンとレジ袋を 受け取り、部屋に向かって踵を返した。 次の瞬間。 「岸野さん」 耳元で名前を囁かれたかと思ったら、 川瀬に後ろから強引に抱きしめられた。 「あ、」 爪先が宙に浮きかける。 そう言えば川瀬って俺より10センチは 背が高いんだっけ。 振り返り、川瀬と目を合わせた。 「あれ、メガネは」 「伊達なんで外しました。プライベートは 裸眼です」 「変わってるね。何でメガネなんか」 川瀬と会話しながら、 ドキドキが止まらなくなった。 俺の両手が川瀬のカバンとレジ袋で どうにもならない状態をいいことに、 川瀬の右手は俺のベルトのバックルに伸び、 左手はYシャツの上の尖りを探り始めて いたのだ。 「か、川瀬」 まさか、このタイミングで始まるなんて。 ズボンが床に落ち、足先に絡まって止まった。
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