3人が本棚に入れています
本棚に追加
腑抜け
三途の川に写る下弦の月
その向こうに友人の姿が浮かぶ
張り上げる程でもないくらいの声で
返事を気に止める様子もなく
俺は独り言のように話しかける
もう既読の付かないLINEを送るのはやめたよ
だけど近況報告は必要だよな
もうお前のいない街とも上手くやっていけるようになったし
残った仲間もそれぞれで上手くやっている
余命半年といわれたあいつも
そろそろ4年目の余命に入ったよ
それと今この川を俺のゲーム仲間が渡っている
名前も知らない友人だけど
お前とはきっと馬が合うだろうから連絡しておく
あれから2年経ったけど
そっちの生活には慣れたかい?
返事の聞こえない距離に身を移しながら
静かに語りかける
風の音に声がまぎれている気がする
…なんで俺だけ引き返してしまったのだろう
最初のコメントを投稿しよう!