腑抜け

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腑抜け

三途の川に写る下弦の月 その向こうに友人の姿が浮かぶ 張り上げる程でもないくらいの声で 返事を気に止める様子もなく 俺は独り言のように話しかける もう既読の付かないLINEを送るのはやめたよ だけど近況報告は必要だよな もうお前のいない街とも上手くやっていけるようになったし 残った仲間もそれぞれで上手くやっている 余命半年といわれたあいつも そろそろ4年目の余命に入ったよ それと今この川を俺のゲーム仲間が渡っている 名前も知らない友人だけど お前とはきっと馬が合うだろうから連絡しておく あれから2年経ったけど そっちの生活には慣れたかい? 返事の聞こえない距離に身を移しながら 静かに語りかける 風の音に声がまぎれている気がする …なんで俺だけ引き返してしまったのだろう
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