流離

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流離

目的地がない旅を 気取った言葉で言い換えられなくて 彷徨いながらその言葉を探していたら 帰り道も忘れさすらっていた 消したかった時間がそこにあって 忘れてしまいたい多くがそこにあった 虚無をかかえてさまよいながら 戻るべきところがないことに 無言で気付いた 変えたいと思う出来事もなく 変えようと思う気概もなく 目的地のない旅を 暇つぶしのように繰り返している 振り返ると刹那にも足りないほどの 短い記憶が点在していて ただただ漫然と過ぎた時間を俯瞰し 忘れている帰り道のことを考えた 自分で選んだ旅だから 目的地がないのは解っていた 何かから逃げるようなこともなく ただたたさすらっていただけだから このまま進めば そのうち目的地は生まれるし 辿り着くだろうと考えた だからまだ「目的のない旅」を言い換えるための カッコいい言葉はみつからないし 見つかる場所もみつけられそうにない
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