ペトラと道標

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 ***  ×月●日。  百年くらい前の宇宙飛行士は、宇宙空間で作業する時、別の惑星に降り立つ時にがっちがちの宇宙服装備が必要だったらしい。  いやはや、そう考えると今のご時世は便利になったもんだ。ライダースーツみたいなの一着着て簡単なマスクだけしてれば、全然外でも息吸えるしスペースデブリからも守って貰えるんだからな。  ついでに、異星人との翻訳機能も搭載されているスグレモノ。確か、四十年くらい前に地球に降り立った異星人が、すんげー技術を提供してくれたとかなんとか。いやはや、物好きな異星人もいたものだぜ。  今回の俺たちの旅の目的は、新しく発見された惑星・SG569-31RYの調査を行うことだ。  地球の環境が加速度的に破壊され始めてから久しい。宇宙ステーションの計画もあるが、できれば、環境が安定した別の惑星に移り住みたいってのが人類の本音だ。  そのために俺たちは、地球に近い惑星を見つけては片っ端から訪問して調査をしてるってわけだな。残念ながら今のところ、異常なほど臭くて住めたもんじゃないって星とか、酸素があるにはあるが二酸化炭素濃度が高すぎて息ができない星とか、住人……というよりなんかこう狂暴なモンスターが住んでてとてもじゃないが安全に暮らせないとか、そういう惑星ばっかりだった。  今回の惑星・SG569-31RYは、そういう意味ではなかなか期待値が高い惑星ではある。少なくとも、大気圧と大気の成分が地球に極めて近いことはわかっているからだ。  あとは環境汚染がないとか、住民と仲良くやれそうかとか、そういうことを調べてくるのが俺たちの仕事というわけ。まあ、翻訳機もあるし、何にも言わずにいきなり襲ってくるってことはないだろう。  いやほんと、昔散々いろいろとあったからなあ、もうああいうトラブルは勘弁してほしいってのがみんなも本音だろうな。  知的生命体がいる惑星だってことは事前の探査機調査でわかってることだが、どれくらいの知能レベルか、荒っぽい性格なのか大人しいのか――みたいなことは一切わかっていない。  というわけで、とりあえず惑星が近づいてきたところで一度船を止めて、事前に電波を流して“上陸してもいいか”を伺うことになっている。  電波を受け取れる文明を持った生命体が存在すれば、なんらかの返信をしてくれることもある。  一応まあ、人様のお宅に上がり込むわけだし?それなりのマナーというか、礼儀は守った方がいいんじゃないのってやつだ。それによって交渉がスムーズに進むこともあるしね。  地球はもう少しもつとはいえ、あと百年後はどうかわからないってところまで来てる。  少しでも早く移住計画について、交渉に移りたいところだ。
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