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議題 大人になるとは
悟「さて、とうとう始まってしまったな」
純「わーい」
瞳「脳内会議・・・どうなることやら」
晃「いいじゃねえか。さっさとやろうぜ」
凪「よろしく」
悟「初回の議題は、『大人になるとは』だ」
瞳「最初から難しい議題ね」
凪「常に平常心。落ち着いた人。それが大人」
晃「いきなりだな凪。いやいや、そりゃ老けただけだろ」
瞳「あら、あながち間違いでもないと思うわ」
悟「うむ。物事を見るのに落ち着いているのはいいことだな」
晃「そうかもしれねえけどよ、感情の動きは大事だぜ。歳をとると鈍るらしいからな」
瞳「そうね。純は感受性高いけど、悟は何考えてるかよく分からなくなるし」
悟「む。私は俯瞰して考えているだけだ」
瞳「確かに大人ではあるわね」
晃「でもよ、アクティブな大人だってすげえ格好いいだろ。俺はそうなりたいね」
瞳「それも憧れるわね」
悟「おいおい・・・」
純「でも、大人がわちゃわちゃしてたら変だよ」
晃「分かってねえなあ。色んな事を楽しむのは大人の特権だぜ?押しつけじゃなく自分でやれんだからよ。それにそのわちゃわちゃがまた楽しいんだって」
純「えー、ぼくには難しいなあ」
晃「自分のやりたい事をやりたいようにやる。大人だねえ」
悟「確かにな。だがやりたい事だけで生きてはいけまい」
瞳「そうよね。働かないと生活できないもの」
悟「そうだ。きちんとした生活を送ることも大人の条件ではないか?」
凪「毎日を繰り返すこと・・・」
晃「つまらん」
悟「面白いかどうかじゃない」
晃「違えよ。それが大事なんだろ」
悟「いや、生活をきちんと送るのが大事だ。それが出来てこそ他に目を向けられるのだ」
晃「かー!ダメだこりゃ。生活のためにはまず心の栄養が大事なんだぜ。楽しむ気持ちがなきゃ生きてく意味もねえよ」
瞳「はいはい二人とも落ち着いて。純が怖がってるわ」
悟「む・・・すまん」
晃「わりい」
純「ううん。ぼくは大丈夫」
瞳「まったく。まだまだ大人になれてないようね」
凪「やっぱり自制心が大事」
悟「返す言葉もない」
晃「ちっ」
瞳「それじゃ続けましょ。凪の言う自制心は大切ね」
悟「そうだな」
凪「むふー」
晃「異議なし。でもよ、それだけか?」
瞳「それじゃ晃は他にも何かあるのかしら?」
晃「当たり前だ。それで言やあ純だってしっかりしてるぜ」
純「ぼく?」
悟「ふむ。純は言葉に気を付けているところがあるな」
純「えへへ、ありがとう」
瞳「意識してはなさそうだけど、いつも丁寧よね」
晃「でもよ、純は子どもだろ、どう見ても」
悟「そうだな。年齢的なものもあるか」
瞳「そうね。社会的には18歳から大人として扱われるし」
晃「つっても、見た目だけ大人でもしょうがねえよ」
悟「そうだな。年齢に合わせて成長しなければ」
瞳「それと常識がないとだめよね」
悟「常識という意味では納税の義務を果たしている、とかか」
晃「税金かよ」
瞳「あら、とっても大切よ」
晃「そうだけどよ。その金をもちっと社会に還元してくんねえかな。何に使ってるか分かんねえ」
悟「自分で調べろ。大人なんだろ」
晃「嫌味かよ。ったく」
瞳「税金だけじゃないわよね。世の中色んなルールが溢れてるから」
悟「うむ。常識を知って自制心を持つことが大事だな」
晃「あっさりまとめんなよ」
凪「むふー」
瞳「あらあら凪が嬉しそうね」
晃「でもその常識ってのが難しいんだよな。社会に出ると学校じゃ教えてくれないルールが多すぎるっつうの」
悟「確かにな。だが知らないことは知ればいい。謙虚に教わればいいのではないか」
晃「謙虚ねえ。その割に若者の中には自分の都合に合わせた解釈をしたり、ハラスメントだと騒いだり、自分至上主義ばかりな気がするぜ」
瞳「メディアがそうやって報道するから、そう見えるんじゃないの?」
悟「そういう人間がいるのは確かだな。だが先達もまた相手を知りもせずに、これだから若い者は、なんて言う者はいるな」
晃「そうそう、あれでも大人かねえ」
凪「やっぱり自制心・・・むふー」
瞳「(凪はこのフレーズが気に入ったのかしら)そうね。あとは集団ではなく相手をみてあげることも大切よね」
晃「まあな。でもムカつく奴はどうしたっているもんだぜ」
悟「それは否定できないが」
晃「おっ。悟が俺に合わせるなんてな」
悟「仕方あるまい。だが私はいきなりその人を全否定しないぞ。歩み寄ってもダメな相手がいることはあるというだけだ」
晃「かっかっかっ」
瞳「誰だって苦手な人はいるわよ。でも悪口なんかは嫌よね」
晃「ああ、陰でコソコソされるとムカつくな。正面からこいや」
悟「まあな。こっちが仲良く思っても相手に嫌われているなんてよくあることだ」
瞳「あら、悟はさっきから体験談?」
悟「・・・ノーコメントだ」
晃「いや、それは答えを言ってるようなもんだろ」
悟「・・・・・・」
晃「はあ、情けねえ奴だな」
凪「でも歩み寄りを辞めないの、偉いと思う」
悟「ありがとう凪」
晃「その点俺は分かりやすいな。敵と味方がはっきりしてるし」
瞳「それで、味方に裏切られる訳ね」
晃「ああ?んなことはねえ、と言いたいが、無理か。どうも俺は信じた人間には心を開きすぎる癖があるみたいだからな。仕方ねえって諦めてるよ」
凪「ん。でもそこが晃のいい所」
晃「おう。サンキュ」
瞳「私は他人とは一定のラインを超えないように付き合ってるわね」
悟「それもいいが、寂しくないか?」
瞳「人と接するのは怖いのよ。それで自分が傷つくくらいなら少し離れていた方が私は安心するの」
凪「うん。僕も同じかも」
悟「そうか。他人との距離の測り方も、大人になるにつれて変わっていくのかもしれないな」
晃「そんじゃ純はどうなんだ?」
純「・・・・・・」
瞳「あら。静かだと思ったら純は眠そうね」
純「ん・・・」
晃「ま、仕方ねえか」
凪「そろそろお開き、する?」
悟「そうするか」
晃「でもまだ結論は出てねえんじゃねえの?」
瞳「それでもいいんじゃない?」
悟「だな。それじゃあ今回はここまでにしよう」
瞳「また次の議題で会いましょう」
晃「じゃあな」
凪「むふー。ばいばい」
純「・・・おやすみなさい」
第1回 閉会
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