3#だから歌わせろ!!

2/2
前へ
/8ページ
次へ
 俺は彷徨い続けた。  ギターを失い、歌う事を失い、  そして、プライドさえも失い・・・  目に飛び込んで来るのは、この腐りきったこの世界だ。  俺は、ホームレスを排除する為に仕切られたベンチに座って周りを凝視する。  隣国へのヘイトを汚い言葉でがなり立てる、右向きの集団。  ビニール袋をいっぱいぶら下げた手押し車を引いて、ボロボロの服を着て彷徨うホームレスの人。  そして、SNSに他人の誹謗中傷を書きながら歩きスマホをする人。  その他、この生活を脅かす政治に何も考えずに曖昧模糊と洒落込むチャラチャラした若者。  俺は、突然衝動に駆られた。  突然俺は大声で歌い始めた。  ギターを失った俺は、アカペラで路上弾き語りで歌った政治批判の歌を歌い続けた。  そんな俺を見て見ぬふりをする通行人。  煩がって、耳を塞いで足早に立ち去る通行人。  そんな通行人も居たが、それでもこの怒りの歌を立ち止まって聞いている通行人が疎らにいた。  尚も俺は歌い続けた。通りすがる通行人に少しでもこの言葉が届くように。  しかし・・・  「おい、そこの●●!!」  あの隣国への汚いヘイトスピーチを街宣していた、右向きの集団が俺を取り囲んできた。  「フザケタ変な歌歌ってたのはおめえか?」   そうだ。と俺は答えた瞬間に相手は俺のこめかみに一発渾身の殴打を浴びせてきた。  俺はもんどり打って、ベンチの端に腰を激しく打ち付けた。  「それでもおめえは日本人か!!」  日本人です!と俺は答えたとたん、また相手は俺を桁ぐり胸ぐらを掴んで怒鳴ってきた。  「じゃあ証拠を見せろ!!●●人なんだろ?!」  もう、理由が解らなくなった。  何で、ただ自分のメッセージを歌ってただけなのに。  やがて、この騒動に警察がやってきた。  「またお前か!!」  その警官は、この前俺が路上弾き語りをしてるとこを職務質問してきてギターを破壊した警官だった。  何で?!この俺が何で逮捕されるんだ?!  逮捕すべきは、この俺に暴行を加えてきたあいつらだろ?!  解らねぇ!!何で?!理解出来ない!!  迷惑防止条例違反適用?!何だそれ?!  俺が何か悪いことしたか?  俺が何か他人に危害を加えたか?  ただ歌ってただけだろ?!  理解出来ない!!納得いかない!!  この国の司法は誰の味方なんだ!!!!  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加