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「見城さん、ご存じなかったんですね。すみません、俺──」
恐縮したように謝る祥真。
「いや、それはいい。知られたくなかったんじゃなくて特に言う必要なかっただけだから」
「そういやそうだね。あたしと郁海は大学で会うかこの部屋に呼ばれるかで、カラオケに限らず外で会ったり遊んだりってあんまりなかったもんな。飲みに行ったこともないし」
郁海が何気ない調子で恋人を宥めるのに、雅も付け加える。
もしあの時、……カラオケに誘って渋られた際に理由を問い質していたら、おそらくはすんなり説明してくれたのだろうと感じた。
「メシなら俺が作って自分の部屋で食ってたしな」
「あ、……そうなんですね。でもわかる、かも」
先輩二人が言葉を交わすのを目の前で見ていた祥真が、ぽつりと呟いた。
「あたしは自己中心的だから、カラオケもみんなで行くのが嫌なわけじゃないけどやっぱ一人が一番楽なんだよ。好きな歌好きに歌えるし。おんなじの繰り返し歌ったりとかさあ」
実際に、口には出さないが雅にとって大勢でのカラオケは人間関係の潤滑油的なもので「接待」に近い。
「別にお前が何歌おうと同じ曲エンドレスだろうと、俺は全然気にしねえけど。まあ今までそういう機会もなかったしな」
郁海がそういう人間なのはよくわかっている。
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