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「見城さん、このあと空いてたらカラオケ行きませんか?」
「うん、いいよ。あたし今、ちょうど歌いたい気分だったんだ。三河、あんたすごいな! 心読めるのかと思った」
一学年下の後輩である三河 友里奈の誘いに、見城 雅はあっさりOKを出す。
所属する演劇サークルの練習が終わったあと、申し合わせたわけでもなく二人で順に廊下に出たところだった。
「わたしも行きたくなったんで。いえ、裏方なのに何言ってんだと思われそうですけど」
「……そっか、原因はアレか。なーんだ」
すっかり意識の外だったが、そういえば練習が始まる前に「いつかミュージカルがやりたい!」と突然熱弁を振るったメンバーがいたのだ。
思い当ってみれば安易としか言いようがない気もする。
今はサークル内にミュージカルの台本が書ける人間がいないため、外部に頼るなり新たにそういう新人が加入するのを待つなりするしかない。
そのため、まさに「いつか」の話だった。
「二人でもいいですけど他の人も誘いましょうか? 副島さんなんてどうかな」
「……あー、郁海はカラオケ苦手らしいから無理だと思う」
今出て来たばかりの部室を振り返っての彼女の言葉に端的に返す。
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